相続人は、相続開始の時から、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条)と規定され、相続財産を当然に承継することを原則としていますが、相続人には相続財産を調査して、相続を放棄するか、条件をつけて承認(限定承認)するか、あるいは単純承認(原則どおり承継すること)するのかを考慮するための期間が与えられています。この期間内に、相続の承認、放棄に関する選択をする必要があります。
相続の承認、放棄
熟慮期間
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければなならないと規定されています(民法915条)。
相続人は、この3か月の熟慮期間内に単純または限定承認、あるいは相続の放棄をするのかを選択し、限定承認または相続の放棄を選択する場合は、この期間内に所定の方式で家庭裁判所にその旨を申述する必要があります。熟慮期間内にこれらの申述がなかったときは、単純承認をしたものとみなされます。
なお、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、被相続人の死亡の事実を知るだけではなく、それによって自分が相続人となったことを覚知した時を指すとされています。
熟慮期間の伸長
遠方に居住していたり、財産が多岐にわたり調査に時間を要したりその他理由によっては、家庭裁判所において熟慮期間を伸長してもらうことができます。伸長の申立ては、熟慮期間経過前にする必要があります。なお、相続人が複数の場合、熟慮期間は、相続人ごとに進行するとされています。
相続放棄の効果
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす(民法939条)とされています。
相続放棄の基本的な効果は、不動産、動産、預貯金、有価証券等の積極的財産も、借金その他の消極的財産もすべて承継しなかったことになることです。
なお、相続の放棄は、管轄の家庭裁判所に申述してしなければなりません。
管理継続義務
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければなりません(民法940条)。